Cinema

2006年4月 3日 (月)

すみだタワーに思う

新東京タワーが、墨田・台東地区に建設されることが決定しました(すみだタワー)。高さは610メートルが予定され、トロントはCNタワーを越え、世界一のタワーとなるそうです。Images

東京タワー完成時から高層建築物の増加による電波障害の増加、いわゆるワンセグ放送の受信にこの高層タワーが必要となったということで、さいたま新都心と建設地をめぐっては、虚虚実実の駆け引きがあった模様ですが、ここでの本題は「すみだタワーによって東京の夜景はどう変わるか?」と言う期待半分なややミーハーな興味です。

私が東京タワーに美を見たのは原将人監督作品『20世紀ノスタルジア』広末涼子のデビュー作でもありました)によってでした。清洲橋をはじめ、「東京の建築物」を美しく活写するこの作品には魅了されたものです。さて、すみだタワーです。完成2011年と、まだ先の話ですが、東京の夜景に新たなワンシーンを確実に刻むこととなるでしょう。できれば、原将人監督に、「東京の変遷」に対する想いも込めて撮って頂きたいと、今から楽しみにしています。

T.D.

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2005年7月16日 (土)

アッバス・キアロスタミ『オリーブの林をぬけて』

アッバス・キアロスタミ監督です。つまり、舞台はイラン。映画撮影中のスタッフをめぐる入れ子構造になっている映画ですが、語られるべきは、映画文法よりもむしろ、映像と主演の二人の男女の瑞々しさ。そして、唖然とするほど美しいラストシーンです。映画史上に残る、と言っても決して過言ではありません。

この映画、キアロスタミ監督の三部作の最後の作品となった映画です。私は、この映画を最初に観ることになりました。イランの人々の純朴さ、ちょっと異なった時間間隔に生きながらも、人間の機微というものは然程変わりはしないのだということを印象付けられます。キアロスタミ後、イラン映画は国際的注目を浴びることになるのですが、映画作家として確立された手法と人間存在に対する優しい眼差しには、深い敬意を覚えます。

リアルタイムでこの素晴らしい作品に出会えたことは幸運と呼ばずして何と呼べばよいのでしょうか・・・。

T.D.

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2005年7月15日 (金)

テオ・アンゲロプロス『こうのとり、たちずさんで』

テオ・アンゲロプロス。この現代ギリシャの映画作家を語るとき、語るべきことはあまりに多いのに、語るべき言葉を紡ぎ出すことが如何に難しいかということを考えさせられます。この映画のモチーフになっているもの、それは「国境」です。映画に込められた政治的あるいは人類に向けてのより普遍的なメッセージに思いを馳せることも意味があることだと思います。

しかし、簡素にして儚く、力強いものの哀しい、この映画に表現された映像こそが、どんな映画評よりも雄弁に何かを訴えかけてくることと思います。もちろん、答えは鑑賞者である各人の中にあります。とても重いテーマを扱いながら、映像美は秀逸の一言。お薦めの逸品です。

T.D.

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2005年7月 2日 (土)

溝口健二『近松物語』

日本の映画作家で一人、挙げて下さい?迷う必要はない。答えは当然、小津安二郎監督だからです。

では、日本映画、この一本を挙げて下さい、と訊かれたら?訊かないで下さい・・・と逃げを打つ代わりに一本を挙げるとすれば、私の場合、それは溝口健二監督作品『近松物語』だけでしょう。恐らく、他にはない。

敢えてその悲恋のストーリーライン云々の話は避けますが、まず前半の主な舞台となった大経師の大店の何とも映画的な佇まいに引き込まれてしまいます。溝口は「黒の作家」です。妖しい白と黒の影像に酔いしれることが出来ます。既に観客は溝口の世界に魅せられているのです。邦楽器のリズミカルな響きも待ち受ける悲劇を、控え目に奏でます。

しかし運命は二人を翻弄します。許されざる逃避行は悲恋の狂気へと誘って・・・などとストーリーを説明すると陳腐になってしまい、何とも言葉で伝えることの限界を感じます。

さて、この映画、後半にロングショットを多用します。そしてもっとも悲劇的な一大ロングショットは・・・止めておきましょう。別格の映画体験が待っていることは、私が保証させて頂きます。どうかご覧あれ!

T.D.

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