昨年の大阪近鉄合併騒動の最中、奥田・日経連会長の定例会見での発言記事が残っています(詳細はリンク先ご参照)。「1リーグ8球団くらいが合理的」と語る奥田氏。去年この記事を目にした時には「経営のプロが言うことで一定の合理性はあるのだろう」くらいに思っていました。奥田氏が特に指摘するのは人件費の高騰と、それに見合う収入が得られず、広告宣伝目的から見ても球団保有は割高になるということ。よって、人気の巨人戦絡みのカードを増やして、球団数、人件費を適正規模にすることを提言しています。
さて、その前提条件の内には「巨人との試合ではたくさん客が入る」と言う「象徴的強い存在」たる読売巨人軍の存在がありました。ただ、その前提条件が今はどうも怪しい。放映権料も更に下落していると思われることから「巨人中心の1リーグ構想」からは状況は変わったと言えます。今、1リーグ化が最適解であるかを、奥田さんに問えばどうした答が返ってくるのでしょうか。
タニマチ体質からの脱却を叫んでいたのはオリックス・宮内氏。この方の発言は経営的には正論でも、その正論性のゆえに反発を招き易い癖があるのですが(かつてあろうことか渡邊恒雄氏から拝金主義者呼ばわりされていました)、言わばNFL型の業界内均衡を図ることが主眼と思われました。選手会のストも引き起こした騒動は1リーグ制を回避しましたが、どのような形で業界として維持発展していくか、多くの課題が残されることに。そして主要プレーヤーであった西武・堤オーナーは舞台から去ります。
阪神の久万・前オーナーに関するエントリーでも書きましたが、従前の方法論では辛うじての黒字化でもなかなか難しい。まして、巨人戦のないパ・リーグでは尚更のことで、(これは親会社の問題もあったのでしょうが)連日ドーム球場を満員にしている福岡ダイエーも赤字でした。その意味において、宮内氏が「タニマチ体質からの脱却」を唱えたことは、部分的には難があっても正論でした。
その後、福岡ダイエーをソフトバンクが買収、ホークスの孫オーナーは、拡大均衡路線を提唱。新規参入の楽天が仙台をフランチャイズとすることで(前年度、日本ハムが札幌に移転)、地域分散が図られる形に。タニマチ体質から脱却しつつあるのかどうかは不明ながら、巨人戦放映権料がドル箱であった時代はレガシーと化しつつあります。また、そもそもコア層は観戦媒体をCSへとシフトさせており、いわゆる巨人戦はM2・M3層が主体のコンテンツとなりつつあることから、視聴率よりも視聴質が問題となりつつあります。この層は耐久消費財のユーザーでもあることから、その世代に訴求すれば「質」は保持できることから、一応、それはそれでコアなスポンサーはつく。放映権料自体は下落していると思いますが。
で、「宮内VS孫」のような図式の中、三木谷氏は事業単体での黒字化を掲げて登場。既に巨人戦自体がレガシーな(ごく一般的な、と言い換えても良い)コンテンツになりつつあり、単黒を達成するためには地域密着しかないのですが、どこへ向かうのか。一つの鍵は地域メディアとの連携ですが、田尾監督解任騒動と前後して河北新報に田尾監督に関する批判的検証記事が。これはどう見るべきなのか。敢えて「人件費の抑制」を打ち出していた三木谷オーナーですが、楽天には喧伝されている程には自由になる資金が無いのかとも思います。
まとまりのない文章になりました。読売「興行」の終焉を書いた私ですが、思えば、新聞と言うメディアも、プロ野球と言うスポーツ・コンテンツも往時の絶対性は無くなっているように思います。今は次世代ビジネスモデルの模索の最中なのかと。田尾監督解任騒動もそうした過渡期に起こった出来事かと思うようになりました。ただ、「改革元年」と言うスローガンはどのような意図を秘めていたのかと思っているところです。一ファンが経営問題に関心を持つようになるのは、幸福な時代とは言えないようにも思います。
T.D.
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