『家族という神話』
「過去から学ぶことは多いかもしれない。しかし、貧困からも、その他社会変動からも人々を守った(標準的なものはあれ)理想的な家族形態など、存在しなかったし、どのような家庭を築くべきかモデルとなる伝統的家族像などない」というのが本書の主張。
クーンツは、家族は自然でも必然的でもなく、個人を社会的に組織化する手段に過ぎぬと断ずる。労働力の再生産機能を担保すること、それが家族の歴史的意義だ、と。
もちろん、それが不自然でも問題なく社会が機能していれば良いが、それが虚構だということを忘れ、あたかも理想的な家族像があるかのように思い込むことが、社会に歪みをもたらすというわけです。社会が「標準的」と認知する家族形態以外のものが、特段高コストだというわけでもありません。といいつつ本書は極論に走らない。
「標準的な家庭ではない」という理由で同調圧力にさらされている人は必読。また処方箋としては、社会福祉の充実とコミュニティでの子育てで、これが日本で一般に受容されるかは疑問。ただ、重要な問題提起として、重く受け止めたいと思います。
T.D.
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