« 佐藤優『国家の罠』 | トップページ | 石井、3勝目&先発初勝利 »

2005年9月24日 (土)

再び、渡邊恒雄氏を考える

世の中を自分の思う方向に持っていこうと思っても力がなきゃできないんだ。俺には幸か不幸か一千万部ある。一千万部の力で総理を動かせる。小渕総理とは毎週のように電話で話すし、小沢一郎ともやってる。政党勢力だって、自自連立だって思うままだし、所得税や法人税の引き下げだって読売新聞が一年前に書いた通りになる。こんな嬉しいことはないわね。これで不満足だなんて言ったらバチがあたるわ。
『渡邊恒雄 メディアと権力』魚住昭著・講談社より、渡邊氏の発言)

何とまぁ、邪気の無い人であることでしょうか。魚住氏は、『君主論』を愛読する渡邊氏はマキァヴェリストであると見立てますが、私は、そうは思いません。マキァヴェッリの説く君主は、かように正直者であってはならないからです。

かつて、東大生時代、日本共産党で「主体性論争」を挑んだ渡邊氏、哲学青年であり、なかんずくカントを愛し、人間の主体性を尊重せよと主張した渡邊青年は、一体どうして今に至るのか…と言う問いはあり得ますが、言わば自己の主体性に正直であると言う一点においては、今も渡邊氏は変わらないのでしょう。

例えば、プロ野球を巡る議論も同様。ファンあってのプロ野球、なのですが、野球興行がかくも長期に亘り人気を博した背景には、読売がメディアを掌握し、読売巨人軍からスター選手が輩出されていたと言う事情があります。従って、ポストON時代にあって、ドラフト制度の制度趣旨を歪めてでも江川卓投手を獲得しなければならなかったし、読売の読売による読売のための改革を断行しなければならなかったのです、多分。

その意味で、読売による改革の旗手であった渡邊氏の行動原理は-ファンから見れば無茶苦茶なものですが-その本音が透けて見えるという分「分かり易い」ものです。これが真のマキァヴェリストであれば、ファンあっての興行、夢を売る選手たち…と言う大義を前面に押し出して、日本テレビの巨人戦放映権料の更なる吊り上げを狙って着々と手を打ちつつ、「ファンと野球をこよなく愛するオーナー」を演じ切ることでしょう。

あけすけに本音を語る渡邊氏を見ていると、渡邊氏は邪気のない青年がそのままそこにある感もあります。言葉を変えれば「裸の王様」なのでしょう。渡邊氏がJリーグ創設時に川淵チェアマン(当時)の「地域密着」の理念に激しく反発したのは記憶に新しいところですが、読売的プロ野球興行は、プロ野球の地域・分散化が定着し、やがて巨人戦全国放送が消滅するときに、長きに亘る影響力の行使の終焉を迎えるのでしょう。

T.D.

|

« 佐藤優『国家の罠』 | トップページ | 石井、3勝目&先発初勝利 »

コメント

そう言えば、朝日批判はしばしば目にしますが、読売批判と言うのは目にしませんね(ナベツネ批判ならありますが)。産経批判もない。毎日に至っては批判する勢力すらないように感じます。何ででしょうね?

投稿: kinks | 2005年10月 8日 (土) 13時21分

kinksさん、コメント有難うございます。「朝日新聞を叩く」と言う構図が論壇でもネットでも「芸」として認知されているとも言えそうですね。ただ、その「叩き」もワンパターンで、私はちょっと食傷気味ですが。

読売に関しては確かに渡邊氏批判はあっても、読売新聞グループに対する批判は「売れない」構造があるのかと思います。本来なら日本、いや世界最大部数を誇る新聞ですから、影響力の大きさから厳しい批判に晒されても良さそうですが…。読売に対する批判は「押し紙」など販売政策に関するものも散見されますね。

それはそれで問題だと思いますが、論調に対する批判があっても良さそうです。産経と毎日は…経営的に苦しいですから。批判されるほどに活気がある媒体ではないのも確かです。それを批判することが「商売になる」かどうかは、やはり大きなポイントかと思います。

読売の場合、渡邊氏は取りあえず批判対象になり得る。しかし、肝心の「読売の内包する問題」まで届かせないための防御壁として機能しているのかな、とも思います。

T.D.

投稿: tropical_dandy | 2005年10月 8日 (土) 14時05分

渡邊氏は確かに無邪気な青年なのですが、影響力がその域を超えているので、要注意です。そして、一方でその底流にある、多分一生抜けないルサンチマンがちらちらと見えて・・・・。
誰か記者が「やっぱルサンチマンですかぁ~」とか問い詰めたら面白いのですが。

投稿: takeyan | 2005年10月13日 (木) 08時44分

takeyanさん、レスポンス、非常に遅れてしまいまして申し訳ありません。ルサンチマン…そうでしょうね、私もそう思います(苦笑)。ニーチェにも傾倒した渡邊氏は記者に問われたらどう答えるのでしょうか。意外と素直に認めたりするのではないかな、と思ったりもしています。

T.D.

投稿: tropical_dandy | 2005年11月 7日 (月) 01時10分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/115387/6095440

この記事へのトラックバック一覧です: 再び、渡邊恒雄氏を考える:

» 久々に吠えたね [雑文御免!]
巨人渡辺会長激怒「村上阪神あり得ない」 ジャイアンツの監督がすったもんだの末、原さんに落ち着き、巨人に関する騒動もしばらくは無さそうだと一安心していた所に、阪神vs村上ファンドのある意味場外戦に対して、久しぶりにナベツネ氏が吠えた。 ... [続きを読む]

受信: 2005年10月 8日 (土) 13時34分

« 佐藤優『国家の罠』 | トップページ | 石井、3勝目&先発初勝利 »