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2005年9月 3日 (土)

歴史の語り部-網野善彦

語り部、というと適切ではないのかもしれません。ですが、私にとっては秀逸な「歴史の語り部」です、網野善彦さん4480089292


網野本はいろいろ読まれている本がありますので、「何を読んでもお薦めです」が私のリコメンド。では、「誰でも読める、網野ビギナーお薦めの一冊は?」となると『日本の歴史をよみなおす』(筑摩書房)。正・続ありますので二冊ですが、ちくま学芸文庫なら一冊です!どこがお薦めかって?…まぁご一読を、と言いたいところですが、それではセールストークになりませんので、かいつまんで「私の読み」を。

網野さんですから中世です。南北朝時代から。私の興味を惹いて止まないのは「字」の話。その時代、日本に「惣村」と言うものが出現。それを統括するのは、庄屋とか名主とか。そうです、日本史の教科書に出ている「あれ」です。面白いのはここから。この人たち、いわゆる識字率、かなり高かった、と言うことは分かっています。さて、ヒラガナかカタカナか、その使い方によってかなり階層差、と言いますか位相の差が分かれる。

ほら、既に面白いじゃないですか。更に、その中で職能やら貨幣やら天皇制(!)やらの問題が複層的に絡んで来るんです。ここは、網野さんの独壇場の世界。貨幣について、現在の感覚とは違う。いや、それはそうなんですが、どう違うかは読んでのお楽しみということにしておきます。ヒントとしては貨幣のあり方が変わったことで、別種の職能領域が拓けていったということ。

中世における「市場」、これはかなり様々な問題を内包してます。言わば日本式貨幣経済が立ち上がったということ。この辺りのスリリングさは読んで頂いて、是非体感して頂ければと、思います。キーワードは「無縁」です。

では、天皇制と職能民との関連性は?これは是非、お読み下さい。網野さんの中世に関する書籍なら何でも良いです。しかし、あくまで「入門編」なら、本書を。中学生でも充分読めますから。一家に一冊、いや、何冊でもどうぞ!

T.D.

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コメント

tropical_dandy さん、こんばんは。

網野善彦さんは私の「先生」のひとりです。
とはいえ生前にお目にかかったことは一度もありません。
あくまで先生の著書を通じてのみ、ただし多くのことを教えていただきました。

最初はちくまプリマーブックス判の『日本の歴史をよみなおす』から入りました。正直なところをいうと最初は「ピン」とこなかったのです。ただ、同書の中で紹介されている宮本常一の『忘れられた日本人』を読んで、シビレました。

網野先生の凄さを知ったのはずっと後のことです。というよりは未だによくは分かっていないのでしょう・・・。

森巣博さん、姜尚中さん、小熊英二さんなどを知ったのも網野先生の著作を通してです。さらには森巣博さんを通じてテッサ・モーリス-スズキさん、上野千鶴子さんを知り、上野千鶴子さんを通じて辛淑玉さん、安積遊歩さんを知る・・・というように、私の「読書の源流」のひとつは網野善彦さんであるということができると思います。

あまりに不勉強なので網野善彦さんの著作についてのコメントができませんが・・・(と、常に逃げます(笑))。

投稿: 喜八 | 2005年9月 6日 (火) 20時54分

喜八さん、こんばんは~。

私は岩波新書のシリーズから「入門」した口です。泥縄式に読み解いていく内に、網野さんの歴史観に引きずり込まれていきました。幸運な読書体験だったと思っています。『よみなおす』は入り口としては入り易いとは思うのですが、やはり網野中世史を堪能するには泥縄式がいいようです。…と言っても、私もどこまで読めているのかはなはだ自信はないのですが…(苦笑)。

T.D.

投稿: tropical_dandy | 2005年9月 6日 (火) 22時17分

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